まるはなのみのみ

日記です。ときどき意見や感想。

【書評】趣味からはじめる昆虫学

熊澤辰徳「趣味からはじめる昆虫学」オーム社 2016年
電子版はこちら

面白い本が出た。在野でアマチュア研究者として活動するためのヒントを纏めた本で、類書はこれまで出ていない。2600円でこの内容なら買いでしょう!お勧め。
本書を通して読んで、だれをターゲットにしているのだろうとふと思った。昆虫の本だと得てして子供向けだったり子供にも読んでもらえる本を、となるだろうが、この本にはその匂いがしない。昆虫に興味があるがどう取り掛かれば良いのか判らない大人、定年退職後の趣味として以前ちょっと昆虫を集めたことある人が再度取り掛かろうとしている人、そんな相をメインターゲットにしているのだろう。それに加え、現在もバリバリに虫をやっている人たちにも十分に読みごたえある内容になっている。いや、ぜひバリバリやっている人に読んでもらいたい。きっと勇気づけられる内容になっていると思う。かくいう自分がアマチュア時代に本書に出会えていればきっと勇気づけられていたと思う。
本書と「フィールドの観察から論文を書く方法」を読んで、ぜひフィールドに飛び出そう!
私は8章に3ページほどの短いコラムを書かせてもらった。当初、熊澤さんからプロからアマチュアへのアドバイス的なものを書いて欲しいと言われたのだが、書くことを考えているうちに次の3つのことが書きたくなった。まず、プロといえどほとんどの研究者は日本ではアマチュア的に研究することを強いられている現状。次に、アマチュアの中にはプロ顔負けの仕事を量産している人がいること。そして学生や若手には最初からあきらめて趣味で昆虫を続けよう、と考えるのではなく、プロをぜひ目指して欲しいこと。自分のことを棚に上げて書きたいことを書かせてもらったのだが、ちょっと厳しい内容になってしまったかも知れない。
熊澤さんからお話を頂いたきっかけは、2014年の双翅目談話会でお会いしたことによる。その時の談話会で講演をさせてもらったのだが、きっとその講演内容と本書の執筆イメージが重なったのだと思う。
本書の構成は以下のようになっている。

  • 第1章 昆虫研究への誘い―知られざる昆虫の世界へようこそ
  • 第2章 昆虫研究に関わることを考える
  • 第3章 昆虫を観察する
  • 第4章 昆虫を採集する
  • 第5章 昆虫を撮影する
  • 第6章 昆虫標本を作成・同定する
  • 第7章 昆虫を飼育する
  • 第8章 見つけたことを発表する