まるはなのみのみ

日記です。ときどき意見や感想。

【書評】 できる研究者の論文生産術

ポール・J.シルヴィア「できる研究者の論文生産術」(講談社
本書は、職業研究者に向けた論文生産についてのアドバイス集のようなもの。優秀な研究者であれば、本書に書かれているようなことはきっと実践していて読んだところで何も得るものが無いかも知れないが、私のように日々に追われている人にとっては何らかの気付きはあると思う。特に私は2章と3章は読んでいて気付かされることが多かった。
私はアマチュア研究者としてサラリーマンしながら10年間ほど研究をしてきた。その間に博士号を取ったりして結構頑張っていたし生産性もあったと思う。仕事の合間に時間を見つけて研究活動を行ってきたのだ。そして今の職を得て、1,2年はプロの研究者だからという意識が働き日々の日課として研究を行っていた。しかしここ数年は、日々の雑用(教育、運営、その他)に追われつつ(和文誌の編集を引き受けてから酷い)、その合間で研究活動を行っている状態になっていた(それなりには論文も出しているけど)。いや日々の雑用も仕事なのだが、研究を二の次にしていたのだ。仕事をこなすための適応だと言えばそれまでなのだが、これではアマチュア時代の研究の仕方と同じではないか!これではいけないのだ。プロの研究者として研究時間を見つけるのではなく作らねばならない。2章で4つの言い訳をバッサリ断ち切られているのだが、まさに今の自分の言い訳ばかりだ。気持ちいいくらいにスッキリした。3章ではスランプさえも言い訳にならないとバッサリ切られる。参りました。
これだけ読むと厳しいトレーニングのビリーズブートキャンプのような感じにも思えるが(実際途中までそう感じていた)、終わりまで読むと著者の優しさが感じられ、研究に対するモチベーションが沸々とこみあげてくる。そして研究スケジュールを立てたくなってくる。
「計画立案」、「短期目標」、「進捗把握」、「習慣化」。これらがたくさん書く研究者に大切なこと。これって普段から自分のことを棚に上げて学生に口酸っぱく言っていることだった。。。
帯の、「よい習慣は、才能を超える」は名言。三中さんの「推薦の言葉」は、週刊誌の裏とかにある怪しげな商品セールスのようで笑ってしまった。でも本書の中に時々登場する何となく判るけど微妙な喩(アメリカンジョーク?)と相まって良い味を出していると思う。