まるはなのみのみ

日記です。ときどき意見や感想。

【書評】学術出版の来た道

「学術出版の来た道」有田正規 岩波科学ライブラリー307

学術出版の裏側、特に大手学術出版社の成立の歴史や現状を細かく記述している。OAやAPCの問題など身近な問題もあり、読みやすい文章でとても勉強になった。CNSとは縁遠い研究分野で研究している身でも、知っておくと良い知識が多く書かれていた。

日本の国益や研究者としてのキャリア形成を考えるとどうしたら良いのだろうと読みながらずっと考えていたが、著者にも良案はないようだ。機材や薬品を海外から買い、著作権を海外誌に渡し学術誌を割高な価格で講読する。国内の学会誌に投稿してもその英文誌は海外の出版社だったりする。純粋国内で編集から出版まで行っている学会誌は人材不足で編集すらままならない。。。「おわりに」に少し著者の意見が書かれていたが、一朝一夕にできる話ではないし国としての方向性も定まっていない。Proceedings of the Japan Academy」を一流にする努力を、という著者の意見は、ちょっと難しいのではないかなと思った。中国での動きについても少し触れられていて、国として見習うべきところがあるという意見はその通りだと思った。

Sci-HubやRGについては触れられていなかった。捏造問題についても多くは書かれていなかった。この辺はあえて避けたのかな。