まるはなのみのみ

日記です。ときどき意見や感想。

日本語で報文を書くこと

ポール.J・シルヴィアの「できる研究者の論文生産術 どうすれば「たくさん」書けるのか」では、日本語で報文を書くことは、例えば和文誌に論文を書いたり短報を書くことは、意味がないことのように書かれていた。それはある意味正しいと思う。でも最近はそうではない面もあるのかなと思い始めている。

この前、中国の研究者の論文に、自分が日本語で書いた解説記事が引用された。内容とは全く関係ないものであったが、なるほどそういう意味で引用したのかと思った。読んでもらえたのが嬉しかったし日本人もそれまで引用してくれていなかったものだったので意外にも思った。実は書いた本人はもっとインパクトあっても良い内容のものだと思っていたのだが、引用されてこなかった。かと言って英語で書いてフルペーパーとするような内容でもないのだが。

そこで、日本語で書かれた報文などが不当に低く見られているのではないか、私はそう思い至った。例えば、中島さんの「日本の水生昆虫」は図鑑であるが、出版されてからの引用数はものすごい。例えば日本甲虫学会の和文誌や月刊むしなんかには毎号必ず複数引用されている。でも現段階でのGoogle Scholarでの引用数は36だけである(いやこれだけでもすごいのだが、カウントされていないものがすごく多い)。

ではどうしたら良いのだろう。

具体的な策として、和文の報告に英語のタイトルを付ける、英語のアブストラクトを付ける、リサゲにあげてアクセスしやすくする、などだろうか。内容も網羅的なものにするなどの努力が必要かもしれない。あとは、引用する側も引用される側も引用件数としてカウントされるようにする必要があるだろう。これが一番重要なんだと思う。

Google Scholarを見ると、私が出した和文報文のうち比較的これまでに引用されてきたものは「矢作川水系のヒメドロムシ」とか「日本産ジョウカイモドキ科とその近縁科のリスト」などがある。前者は絵解き検索があって同定に使える、後者は網羅的なファウナリストという内容で、こういったものが良いのだろう。