まるはなのみのみ

日記です。ときどき意見や感想。

スミナガシの赤

小学校4年生の夏休みの自由研究は、その当時の時代の流れだと思うが、学年全員昆虫採集・昆虫標本が義務化されていた。私はもともと生き物が好きだったし真面目な子供だったので、夏休み前から用意し段ボール箱の底に発泡スチロールを貼り標本を入れサランラップで蓋をしたものを夏休みが終わるまでに5箱ほど作った。思い出せば蝶が多かったが見様見真似で展翅もしたし種名も図鑑で頑張って調べたしいろんな分類群の標本を作っていたので、クラスの中では一番の出来だった。すごく誇らしかった。

しかし、学年で一番は明らかに隣のクラスの子だった。箱はきちんとした標本箱を使っていたし針も昆虫針だった(私は無頭のまち針)。それに展翅もびちっと決まって綺麗だった。友達ではなかったけど、どうやって作ったかを聞いてみるとお父さんが標本の作り方を知っていたので手伝ってもらったという。そうか、いいなぁ、というと、君の作品もすごいじゃないか、でもあれはスミナガシだよ、と言われた。

私の標本の中で1種だけ種名が判らなかった蝶がいた。それは家族旅行で日光に行ったときに樹液に来ていたものを採集したもので、図鑑で名前を調べたけど判らなかったので謎の蝶、ということで箱に入っていた。きっとすごく珍しいものだと思っていた。家に帰ってさっそく図鑑を見るとスミナガシは掲載されていた。でも図鑑の写真と、採った時の翅の光沢となにより口吻の赤が全く違っていて同じものにはどうしても見えなかった。

昆虫採集に目覚めたのは、それから数年後であったが、スミナガシにはそれからしばらくは再会できなかった。今でもスミナガシを見るたびにあの時の記憶が蘇るし、初めて採集した時の赤い口吻に目を奪われたことを思い出す。

スミナガシの他にも、メスアカミドリシジミタガメなども私の作った標本には入っていた。標本がどうなったのか、どうしたのかは覚えていない。

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この写真も色が表現できていないが、何より目をひく口吻の赤