まるはなのみのみ

日記です。ときどき意見や感想。

タトウ標本の有効性

中学3年生の頃から、冬季にケヤキの樹皮下で越冬している昆虫を調べ始めた。いろいろな昆虫が得られること、都市近郊の公園のケヤキなどでもたくさん昆虫が採れること、冬季に他にやることがないこと、ではまっていた。大学生になり、一時は卒論として調べても良いかもと思ったこともあったが、だれかが博士論文としてまとめていたはずと指導教官に言われ、卒論にすることは諦めた(今でも論文が判らないし本当にそんな調査をしていた人がいたのかも判らない)。1994年に地元の同好会に同定できた分だけを報告したが、報告していないデータも残っていた。

一連の調査で採れた昆虫は、最初の内はインロー箱に2箱分くらい標本を作ったが、種も限定されるので後の方はタトウに入れたままで保管していた。

最近になり、1994年の報告に関して、リストアップされているとあるカメムシについて問い合わせが来た。カメムシは自信がないので同定ミスもあるだろう。昔の標本とタトウをひっくり返した。とりあえず報告に使ったものは短時間で探し出せた。タトウであってもしっかり保管されていると探し出せるしタトウの方が便利なこともあるんだな、と思った。生態学的調査やファウナ調査などのvoucher specimenをタトウで適切に保管しておくというのは、下手に針刺し標本を作るよりも有用な気がしてきた。いま改めてタトウの保管について報告を纏めようとしている。

タトウを探索しているときに別のカメムシの標本を見つけた。チャヒメを採集に行った際にチャヒメなどと一緒に採集していたものだ。その虫を採ったことは忘れていたが、タトウに並んでいる他の昆虫の顔ぶれを見るとおそらくこういう状況で採ったんだろうなと想像できた。専門家に見て貰うと、そのカメムシはとてもすごい発見のようだ。今回の標本は残念ながらメスだったのですぐに発表されるようなことはなさそうだけど、タトウで保管しておくと採集状況なども想像できるのでいろいろメリットもあるように思った。

f:id:yoshitomushi:20210313204111j:plain松本おじさんから巻き上げた貰った標本。学会の採集会の時にネキが採れなくて悔しがっていたら、欲しかったらやるよ!って。嬉しかったけど、翌年に自分でも採ったので貰ったこっちはタトウに眠っていた。自分で採った標本はきちんと標本にしたけど、前の会社に置いてきてしまった。