博物館に関係する人は必ず読むべきだろう。勉強になるし、本書を読んで考えることが重要だと感じた。6章ありどれも文系の博物館、美術館の話題が中心になっている。
1~3章は、異口同音に近年の文化財保護法の改正問題や、「学芸員はがん」の発言について書いている。気付いたこととして、改正問題は現政府だけのことではなく、その前から段階的に物事が進んできていたということ。そして様々な要素の1つに過ぎないということ。複合的だから根深いし、ある一面をとらえると正しくもある。決まってしまってからでは遅いし、平常時から発言していかねば間違った方向性に導かれてしまう。普段からいろんな方面にアンテナを張っておくことも重要だ。そして大局的な視点が求められる。これは様々なことに言えることだと思う。
4章は石見銀山での実例で、地元の主婦と文化財住宅の公開運営を行ったもの。素晴らしい成功例だが、どこででもは出来ないし、継続性を考えるとそれが良かったのか判断できないと思った。地域に根差したことで、食文化や風習など地元住民が取り組みやすい課題でもあったのだと思う。
5章は尼崎史料館の話。存在意義を問われた際に地域に開かれたリファレンスとして機能させることを目指したところが良かった。国ではいま公文書の在り方が議論されている状態なので、市町村にこのような施設があることはとてもうらやましく思える。なんでも残して後世で再検討できるようにすべき。でも現在はデジタル化の時代、デジタルアーカイブと現在のデジタル文書をどのように集めるか、そういった話も知りたかった。
6章はまとめ。世界遺産に絡む話は知らず、科学や学問軽視という現在の日本の問題点がここにも出てきて、これは酷いと感じた。まぁ世界遺産自体、科学や学問とは全く関係ないと言われてしまえばそれまでだけど。
博物館によってミッションが異なる。1つ言えることとして、5章にも出てきたが在野研究者であったり市民研究であったりを育てサポートすることが今の博物館の重要な使命の1つになっていると思う。それを今流行りの生涯学習・教育と呼ぶのかも知れないが、その活動を支えられる人材と様々な資料・史料の保管・利用が博物館には必要である。
自然史系と歴史文化系は、やはり違う面も多いけど、お互いに学ぶべきところもあるとも思った。