まるはなのみのみ

日記です。ときどき意見や感想。

【書評】狩猟 始めました 新しい自然派ハンターの世界へ

「狩猟 始めました 新しい自然派ハンターの世界へ」 ヤマケイ新書 安藤啓一・上田 泰正 2014年
この前の島根出張の際に出会った素晴らしい本。今年読んだ本の中で一番かも知れない。
現在の日本において自然環境の劣化の原因は、直接改変や外来種等いろいろあるが、シカなどの大型哺乳類の個体数増加も無視できないほど大きな原因の1つとなっている。私は直接的にも間接的にも鳥獣害対策に関わることになるかも知れないので、ハンターの資格を取りたいと思っていた。そのことが本書を手に取った理由だ。
1章2章の実際のハンティングの様子を日記調に書いているところはワクワクさせられた。まさに動物観察だと思う。実際、哺乳類の専門家とフィールドを歩くと、彼らは地形を読み、植生を見て、哺乳類の感覚になって這い回る。最終的な成果が違うだけで途中のアプローチは全く一緒である。
3章は6人の若いハンターについてヒアリングして、どうしてハンターになったのか、どういう活動をしているのかを纏めている。たいへんユニークな人たちばかりで面白い。最近は、若い世代のハンターが増えているということは知っていた。その一因として「食の安全」への関心があると書かれておりなるほどと思わされた。
4章5章は、食肉と骨や毛皮の利用について。骨や皮の利用についてはもう少し詳しく書かれていると良いと思ったが、著者らはあまり興味ないのかも知れない。
6章は今の日本の自然環境の問題点をハンターの目から指摘している。ここが一番私が読みたかったところ。私は単純に有害鳥獣駆除のための手段としてハンターの資格を取りたいと思っていた。ここまで読み進めて、私の考えは全く浅はかだったと思い知らされた。命あるものの命を奪い、単に土に埋める。ハンターたちが行っている行為とそこでのジレンマに気付きもせず、増えすぎたものをバンバン撃つべし、などと考えていた自分の思考の浅はかさに反吐が出る。しっかり考えたい。
7章は具体的にハンターになるための必要な手続きが纏められている。
とにかく、狩猟に興味がなくとも、本書は自然環境に興味がある人には本当にお勧め。若いハンターが増えていて類書も出ているものの(類書はまだ読んでいないけど)、本書は読みやすくバランスの良い本だと思う。
1つだけ難癖をつけると、著者が2人なので、どこを誰が担当しているのかを明らかにして欲しかった。