まるはなのみのみ

日記です。ときどき意見や感想。

日本のヨツボシテンダマは3種!

Sogoh, K. and H. Yoshitomi, 2017. Revision of the Genus Ancylopus (Coleoptera: Endomychidae) of Japan. Elytra, n.s., 7 (2): 421–438.
これも思い入れのある論文になったので紹介。十川君のテンダマ論文2本目。
ヨツボシテントウダマシは畑の脇などに生息するテントウダマシ科の中でも最普通種といってよい存在。日本からはこれまでに3種が記録され、そのうち1種はシノニムとされたので、2種(ヨツボシ・ベニヨツボシ)が一応分布することになっている。しかし、富士山周辺から1度だけ記録されたベニヨツボシは正体がよく判っておらず、日本にはおそらくヨツボシ1種が広く分布するのでは、というような感じになっていた。
十川君の修論の一部として春からこの属を検討し始めた。ヨツボシを解剖しまくって1種しかいないなぁ、と思っていた矢先、富士山周辺や木曽御嶽周辺の標本からベニヨツボシらしいものを発見。よくよく調べてみると、雌雄ともに明らかにヨツボシとは区別できることが判った。これはかなりショッキングなことだった。この事実は自分たちが最初に気付いたのかは判らないが、ぜひ自分たちが論文化したい。ということで極秘に研究を進めた。しかし標本数が少ないので、ある程度研究が進んでから、いろいろな方面に標本の提供をお願いし、本科に詳しい方々にも、この事実をご存知かを確認した。すると、やはり知られていないことだった。また、各地の標本も少し集まってきた。ベニヨツボシは東日本の少し標高の高いところで見つかることが多いようだ。もう1種、ニセヨツボシは北大の標本に入っていた。私が標本調査をした際に、福島県産の少し変わった模様の標本を見つけたので、お借りしたところ第3の種であった。こちらは日本初記録種となった。
11月の甲虫学会での十川君の発表は、けっこうインパクトがあったと思う。私の前で聞いていたFさんが感嘆の声をあげていたのを聞いた時には思わずにやりとしてしまった(twitterに写真が出たとも聞いた)。人によっては、かなり懐疑的な意見も貰ったが、それもよく理解できる。こんな普通種に複数種いるというのは、私自身も最初は信じられなかったし、ヨツボシは変異も多い。ぜひ論文を読んで欲しい。
実は最近になり、ベニヨツボシが某所でたくさん採集されたり、西日本にも分布することが判ったりしている(論文では中部以東)。きっと生息環境が3種で微妙に違うのだと思う。ぜひそれらを調べて欲しい。今回の論文で3種いることと区別点が示されたので、おそらく知識の蓄積は驚くほど早く行われるの気がする。
ヨツボシテンダマの雄
ヨツボシテンダマの幼虫
ベニヨツボシテンダマの雄