まるはなのみのみ

日記です。ときどき意見や感想。

災害を受けた博物館

M.J. TYLER, L.A. FUCSKO & J. D. ROBERTS (2023) Calamities causing loss of museum collections: a historical and global perspective on museum disasters. Zootaxa 5230 (2): 153–178.

サイクロン、戦争、火災、洪水、地震・・・・そういった災害被害を受けた博物館についての報告。本論文で取り上げられた例は57施設に及んでいるが特に第二次世界大戦での被害が大きい。生物多様性にとっても平和が重要ということが言える。日本からは陸前高田市立博物館が報告されている。施設としての被害について纏められているので、小さな規模、例えば大学の昆虫コレクションが無くなったとか、は取り上げられていないので、実際にはもっと多くの博物資料が様々な災害の被害を受けて消失しているものと思う。実際に今もウクライナで進行中でもあるし。

著者らはアブストラクトとイントロの中で、タイプシリーズをできるだけ複数施設に分けて保管することやホロタイプの写真が残っていればphysicalなタイプが無くなってもその写真をホロタイプとする柔軟さが必要ではないかと書いている。確かにその通りだと思うし、わざわざネオタイプを指定せずに個々の研究者の運用的な措置としてそういったことが行われているケースもあると思う。また、自然史博物館施設が国に1つしかないのもリスクだとしている。

いろいろ考えさせられる報告だった。でもこの雑誌に掲載されるんだという感想。