まるはなのみのみ

日記です。ときどき意見や感想。

マンボウの分類

E. Sawai, Y. Yamanoue, M. Nyegaard & Y. Sakai (2017) Redescription of the bump‑head sunfish Mola alexandrini (Ranzani 1839), senior synonym of Mola ramsayi (Giglioli 1883), with designation of a neotype for Mola mola (Linnaeus 1758) (Tetraodontiformes: Molidae). Ichthyol Res, DOI 10.1007/s10228-017-0603-6
ウシマンボウの学名はこれまでMola ramsayi (Giglioli 1883)とされてきたが、別種マンボウのシノニムとされてきたMola alexandrini (Ranzani 1839)に先取権があるということが判明し前者を後者のシノニムとした。へえ〜そんなこともあるんだ。欧米の博物館標本を細かく調査した成果なのだと思う。ただ、マンボウには多くのシノニムがあるようなので、もしかすると他にもこうした例が残っているのかも知れないとも思った。昨年のサザエといい、こういったメジャー分類群の博物学的問題の解決を日本人研究者が行っているのは嬉しいことだ。
加えてマンボウMola mola (Linnaeus 1758)のネオタイプを指定している。ここでちょっと疑問に思ったこととして、Ozodura orsini Ranzani, 1839のホロタイプをわざわざ選んでTetraodon mola Linnaeus, 1758のネオタイプに指定しているが、なぜ新しい別個体の標本を選ばなかったのだろうか。1個体の標本を基に2つのタクサが記載されることになり、あまり行儀のよい状態ではないと思う(ただし無用な混乱を避ける策としてはありなのか?)。ネオタイプの指定は、もう少し慎重にすべきだと思うし、ホロタイプが無いという仮説ではなく存在するという仮説の元にいろいろ検討し、できればネオタイプの指定を避ける方向で考えるべきだと私は思っている。なので、論文を読み切れていないのだが、ここがすっきりしなかった。分類学者としては、シノニムリストでタクサの来歴を語るべきと思っており、ウシマンボウの方もマンボウの方もシノニムリストで読み切れない部分があり(マンボウの方にはシノニムリストが付いていない)、そこもすっきりしなかった。ただし、著者らの最近の別の論文も出ているようなので、そちらに出ているのかも知れない。
この解説を読んだが、よく判らなかったので原著論文を読んだのだが、ちょっと別の謎が深まった。ただ、ななめ読みだし他の論文も拾えていないので、勘違いしているところもあるかも知れない。