まるはなのみのみ

日記です。ときどき意見や感想。

Stigmoderini

C. PINEDA & K. MATSUMOTOTypes of the New World Stigmoderini (Coleoptera: Buprestidae) deposited in Natural History Museum, London Buprestidae: Buprestinae: Stigmoderini. Zootaxa 4964 (3): 443–470.

69種を扱い、そのうち28種のレクトタイプ指定を行っている。

レクトタイプの指定は、むやみに行うべきではない。シンタイプが複数あっても、分類学的問題があるわけで無ければそのままシンタイプシリーズであって良い。昔の著者が記載した種は単に”Type”としている標本を基にしていることが多いが、それらが単一標本に基づくのであればそれはホロタイプである。しかし単一標本に基づくかどうかわからない場合、それはシンタイプという位置づけ(つまり記載時に他の標本も見ていた可能性があることを否定しない)でいることを推奨している。

この論文では、これらのICZNを次のように解釈している。古い著者が記載した種について、博物館にある標本が1つであってもそれをシンタイプと考える(他の博物館にも標本があるかも知れないから;ICZNの考えに基づく)。そのうえで、昔の著者が単一標本に基づいて記載しているかは判らないから(つまりホロタイプかどうかという検証はできないししない;ICZNではできる限り追うべきという立場)、分類学的地位の確定を理由にレクトタイプの指定を行うというものだ。

後半のところがもやもやする。確かに学名の安定性を速やかに確保するためには今回の論文の措置は良いと思うが、他の博物館に保管されているかも知れないシンタイプのことを全く配慮しなくて良いものだろうか。それってBMの権威主義的なところなのではないのだろうか。一方で、古い著者が記載した種について、それが単一標本に基づくかどうかなんてタイムマシンでもない限り解明できないものかも知れない。現存するものが単一であっても、過去に破棄された標本もあったかも知れないし。でもそんなこと言いだしたらキリがないのでシンタイプを容認するのではなく極力レクトタイプ指定してしまえ、ということになってしまう。現行のICZNがそうしていないのは、レクトタイプ指定合戦になってその命名法的行為が博物館の権威付けに利用されたり不要な命名法的混乱を招きかねないということを回避するためだろう。

古い著者のコレクションの来歴や特徴、分類群の標本の扱いについての伝統と特徴など、様々な要因があるから、この論文の命名法的行為が良くないとは言えないし、上に書いたように学名の安定性の速やかな確保にはなっているとは評価できる。しかし・・・・