まるはなのみのみ

日記です。ときどき意見や感想。

【書評】白畑孝太郎 ある野の昆虫学者の生涯

永幡嘉之「白畑孝太郎 ある野の昆虫学者の生涯」(2007年 無明舎出版

たぶんこれで3度目だと思うが、通して読んだ。とても良い本だし、文章も美しい。白畑も永幡も地に足が付いた素晴らしい仕事をしているが、自分はどうだろうか。反省させられる。白畑コレクションが救われたのは、遺族と永幡君の努力の結晶だが、そうやって救われるケースは稀だろうし今後はもっと厳しくなるだろう。白畑の戦前のコレクションはとても貴重だが、戦後のものでも現在のものでも、それを後世に継承し続けていくことが重要で、現在は白畑のように網羅的にコレクションを構築する人が少なくなってきているので、今の状況を後世に伝えるためにはどうするのが良いのだろうかと考えさせられる。かと言って、今からバカスカなんでも採集してコレクションを構築することは、いろいろな問題に当たり難しそうだ。

白畑は「酒田駅前の写真屋で現像のあがった封筒を受け取ると、必ずその場で机を借り、1枚1枚丹念にデータを書き込んだ」とのこと。写真と言えばデジタルの世の中になって、データをそれぞれの写真にどう付加させていくかは悩みどころだし、それらを後世にどう継承していくのが良いのだろう。これも悩みだ。

本書はもっともっと評価されて良いと思う。私が持っている本は著者のサイン入りで家宝にしている。