まるはなのみのみ

日記です。ときどき意見や感想。

アマミヨコミゾドロムシ

Kamite, Y., H. Yoshitomi and M. Hayashi, 2017. A Remarkable New Species of the Genus Leptelmis Sharp from Amami-Ôshima, with Redescription of the Larva of Leptelmis gracilis Sharp (Coleoptera, Elmidae, Elminae). Elytra, n.s., 7 (2): 395–408.
思い入れのある論文が出たので紹介。
今年の3月中旬、第一著者の上手君から私と林さん宛に1通の短いメールが入る。「琉球列島未記録の属のヒメドロムシを採集したけど何か情報をお持ちですか?」暗号のような謎かけのような訳のわからない文章に、私はそんなんじゃ判らんと憤り、林さんは画像あれば送ってくださいと返答する(ここで性格がはっきり表れる)。そして上手君からすぐに送られてきた画像に驚かされる。ヨコミゾドロムシだった。奄美大島で採集したとのこと。ヨコミゾドロムシは日本本土と韓国、そして台湾から記録されるが琉球列島からは未記録だった。私は本土と同じかも知れないし台湾を含めた種の検討が必要と難癖をつけ、林さんは少なくとも台湾の種との検討は必要でしょうという話をする(ここでも性格が表れる)。そして上手君を中心として3人の共同作業で論文作成することになった。
私は交尾器の図作成と計測を担当することになった。すぐに標本が送られてきたが、やはり日本本土にいるヨコミゾドロムシとは外見はあまり差が無く、まぁ少し違うようなので別種は別種だろうな、と思って雄交尾器を解剖してみると驚いた。ぜんぜん違う!「まじか!」私の驚いた時の口癖だが、解剖しながらずっとつぶやいていた。
手元にヨコミゾドロムシ属の世界の種の記載は揃っており、それを並べて検討すると奄美大島の種は日本や台湾から知られる種と全く違い、むしろ中国南部から知られる種に近縁なことが判った。いわゆる遺存種と呼ばれるような存在なのだろう。こんなすごいのを見つけるなんて、上手君が羨ましい!そうも思った。
今年は前期のミュージアムの特別展で新種発見に関する展示を行うことになっていて、ちょうど計画を練っているところだった。その際の目玉の1つになるのではないか、未記載種を展示するリスクはあるが、すぐに論文を執筆して投稿してしまえば問題ないのではなかろうか、と思い上手君と林さんにも相談しOK貰う。そしてその特別展のためにという言い訳を作って、自らも4月に奄美大島に調査に出掛けた。
上手君から教えて貰ったポイントは、私なら素通りしそうなあまり面白くなさそうな場所であったが、ヨコミゾドロムシは採れた。ちょっと感動した。これを自分で最初に発見したら気絶するほど興奮しただろうな、と上手君を羨ましく思う。幼虫を狙って数時間粘ったが全く採れなかった。


前期の特別展もうまくいき、原稿作成も第一著者を中心に計画的に行え、無事に論文公表まで漕ぎ着けることができたのは本当に良かった。
このニュース動画の一部にも写り込んでいたりする。
https://www.youtube.com/watch?v=9hlM3wWBqEU