まるはなのみのみ

日記です。ときどき意見や感想。

ジョウカイモドキの内袋骨片

Yoshitomi, H. (2014) Comparative morphology of the endophallic structures of the genus Laius (Coleoptera, Melyridae), with the descriptions of three new species. European Journal of Taxonomy (97): 1–29.
オープンアクセスでここからダウンロードできる。
これまで何本かイソジョウカイモドキ属に関する論文を出してきて、数種の新種を記載してきた。当然雄交尾器も検視していて、内袋に棘があることも確認しており、それらはaedeagusから透かして見えていたので、何となく記載してきた。私だけでなく、世界中のジョウカイモドキ研究者もそのように研究してきていた。しかしこれでは限界があると感じていたし、しっかり見ることが出来ていないのは間違いなかった。交尾状態の標本を得たり内袋を引っ張り出したりして、そこにある棘を調査した。すると主要な骨片は2つで属内で安定していた。そこで本属19種(含3新種)について骨片を引っ張り出し記載を行った。その結果、5つの種群にグルーピングできることも判った。
4年前に台湾から記載した種は、台湾本土と緑島、蘭嶼から標本が得られているが、大きさや体の色が微妙に違っており、もしかするとそれぞれが独立種の可能性もあるものの、雄交尾器や触角の形状から判断して1種として扱っていた。今回内袋の骨片を見たところ、やはり区別できなかった。
ジョウカイモドキ科全体の分類学的研究は、本論文が出たことにより今後は骨片を見なければならないというスタンダードが出来たと思う。近い仲間では同様の骨片を持つことは確認しておりオビジョウカイモドキ属では種の識別に有用な形質だと判っている。次はこの属を再検討したい。しかし、科全体に今回の骨片が普遍的に見られるかは、ジョウカイモドキ科が多種多様な科であるだけに疑わしい。今後の研究が望まれる。