まるはなのみのみ

日記です。ときどき意見や感想。

四国のキマダラカメムシ

キマダラカメムシは、日本で分布域を急速に拡大している外来種で、元々は九州の一部地域から記録されていましたが、近年では関東地方以西で広く記録されています。しかし四国では1968年に徳島県で1例記録がありますが、その後は全く記録されていません。中国地方では既に広域に分布していることから、瀬戸内海を越えて四国にも渡ってくる可能性があると考えられていました。
農学部昆虫学研究室の惣中さんと岩田さんは、2012年秋に城北キャンパスにてキマダラカメムシを2頭採集しました。これが愛媛県初記録であり、本種が海を越えて分布を拡大したことが確認されました。加えて本学の卒業生の矢野さん(面河山岳博物館の学芸員)も石鎚山で本種を1頭採集し、それらの記録を纏めて共同で学会誌に発表しました。
惣中光太郎・矢野真志・岩田朋文,2013.四国におけるキマダラカメムシの追加記録.Rostria, (55): 57-58.
さて、1968年に徳島県で1例確認されたのは一体どうしてでしょう。この記録は台湾からの輸入バナナの輸送用ケージについていた個体を採集したことから、台湾から間違って持ち込まれたのではないかと考えられています。そこで惣中さんらは愛媛大学ミュージアムに保管されている徳島県で記録されたキマダラカメムシの標本を詳細に検討してみました。すると、日本で分布域を拡大しているのは中国大陸原産の個体群であり、徳島県で記録されたものは台湾などに分布する東南アジアの個体群であることが判りました。つまり、徳島県での記録はこれまで考えられていた通り、台湾からバナナと共に誤って持ち込まれたものである可能性が高いことが再確認されたのです。
城北キャンパスと石鎚山の2か所で確認されたキマダラカメムシは、愛媛県内でも分布を拡大するのでしょうか。ぜひみなさんも近くの公園などでこのカメムシを探してみてください。体長は2センチ程度と大形で、特徴的な色彩をしているので識別し易いカメムシです。

===ミュージアムのお知らせより===