まるはなのみのみ

日記です。ときどき意見や感想。

Picの呪い

Picの呪いがかかっている分類群が甲虫類にはいくつもある。そのうちの1つがCallirhipidaeだった。
Hájek, J., 2011. World catalogue of the family Callirhipidae (Coleoptera: Elateriformia), with nomenclatural notes. Zootaxa, 2914: 1−66.
本論文では,ホソクシヒゲムシ科の世界のカタログを作成した.多くのタイプを検視しており,多くの新結合・新地位を提唱し4属群39種群の新参異名を新たに認めている.その結果,本科を10属175種(亜種を含む)に整理している.本論文により本科の分類学的研究は飛躍的にやり易くなったと考えられる.しかし以下の4つの問題が残っており一筋縄にはいかないと指摘している:
1) 外部形態の種内変異が大きい;2) 性的二型が大きく,一方の性で記載されている種の雌雄の対応関係を追うのが困難;3) LatreilleやFairmaire,Picといった古い時代の重要なタイプ標本が紛失もしくはアクセス困難な状態になっている;4) 属群を分けている特徴が曖昧で系統解析を基礎とした属の再定義が必要である
ということで、完全に除霊された訳ではないが、本論文は大きな一歩だと思う。
日本産種については以下の4種がリストアップされている.なお,Horatocera属とされていた2種については,既に同著者により”Catalogur of Palaearctic Coleoptera Vol. 3 (1996)”においてSimianus属へ移動されている.また,ムネアカクシヒゲムシの変異として記載されたgalloisi Pic, 1932も,単なる色彩変異であるとして新参異名として処理済みである.よって今回の論文では日本産種に関する変更点はないことになる.
オキナワナガクシヒゲムシ Callirhipis (s.str.) kurosawai Sato, 1995
ナガクシヒゲムシ Callirhipis (s.str.) miwai Nakane, 1985
ムネアカクシヒゲムシ Simianus niponicus (Lewis, 1895)
オオシマクシヒゲムシ Simianus oshimanus (Nakane, 1973)