まるはなのみのみ

日記です。ときどき意見や感想。

Hydaticini

Miller, K. B., J. Bergsten, & M. F. Whiting, 2009. Phylogeny and classification of the tribe Hydaticini (Coleoptera: Dytiscidae): partition choice for Bayesian analysis with multiple nuclear and itochondrial protein-coding genes. Zoologica Scripta, 38: 591-615.

出ていることに偶然気付く。まだearly viewである。 →11/7 正式版が出ていたので修正。
Hydaticiniについて、成虫の外部形態、核(histone III, wingless)とミトコンドリア(COI, COII)に基づき系統解析を行っている。その結果、(i) Hydaticiniは単系統、(ii) Hydaticus LeachはProdaticus Sharpを考慮すると側系統群である、(iii)Hydaticus (Hydaticus)は単系統、(iv) Hydaticus (Guignotites)はProdaticusや、Hydaticus (Pleurodytes)、Hydaticus (Hydaticinus)を考慮すると側系統群である、の4つが導き出された。その結果に基づいて、HydaticusとProdaticusを独立属と認め、Hydaticusの亜属とされていたGuignotites、Hydaticinus、Pleurodytesの3つをProdaticusの新参シノニムとして扱っている。
結果だけ見ればスマートで建設的な論文のように感じるが、中身をよくよく見てみると、苦しいところがあるように思うし、良くないと思うところもある。
まず移属するものについて、comb. nov.等が記されておらず、正式な分類学的措置がないがしろにされている感じがする。自明の理と言われればそれまでであるが、Nilssonのカタログからでもリストを持ってきて明確にすべきだったのではなかろうか。また、属の新結合については、断りなきままいきなり表れてくるので、混乱する人も多いと思うし、実際自分も整理して初めて気付いたこともあった。読みきれていないが、ProdaticusをHydaticusのシノニムとして扱っても良かったのではなかろうか。その方が分類学的変更も少なかったように思う。
日本産種の分類学的変更についてみると、本論文から読み解けるのは次の通り。

<従来の分類>
Hydaticus (Guignotites)
bowringii Clark, 1864 シマゲンゴロウ
conspersus conspersus Regimbart, 1899 オオイチモンジシマゲンゴロウ
conspersus sakishimanus Nakane, 1990 リュウキュウオオイチモンジシマゲンゴロウ
grammicus (Germar, 1827) コシマゲンゴロウ
rhantoides Sharp, 1882 ウスイロシマゲンゴロウ
satoi Wewalka, 1975 スジゲンゴロウ
vittatus (Fabricius, 1775) オキナワスジゲンゴロウ
Hydaticus (Hydaticus)
aruspex Clark, 1864 オオシマゲンゴロウ

<新しい分類>
Prodaticus (fabricii group)
rhantoides (Sharp, 1882) ウスイロシマゲンゴロウ
Prodaticus (vittatus group)
bowringii (Clark, 1864) シマゲンゴロウ
satoi (Wewalka, 1975) スジゲンゴロウ
vittatus (Fabricius, 1775) オキナワスジゲンゴロウ
Prodaticus (species group not determine, fabricii group?)
grammicus (Germar, 1827) コシマゲンゴロウ
Prodaticus (?? not treated)
conspersus conspersus (Regimbart, 1899) オオイチモンジシマゲンゴロウ
conspersus sakishimanus (Nakane, 1990) リュウキュウオオイチモンジシマゲンゴロウ
Hydaticus
aruspex Clark, 1864 オオシマゲンゴロウ

オオイチモンジシマゲンゴロウについては、何となくHydaticusに入れたいところなのだが、どうなのだろう??