まるはなのみのみ

日記です。ときどき意見や感想。

【書評】新種発見! 見つけて、調べて、名付ける方法

新種発見の発見談を21人が語っている。新種の数だけエピソードがある。どれも楽しい。ほとんどの著者を知っているし半分近くの発見談も記載論文も目を通しているものだった。でも発見者や記載者が実際に自分の言葉で発見談を語るのはどれも貴重で読んでいて楽しい。それも最近の発見談ばかりというのがすごいことだと思う。"Top 10 new species"の日本版みたいなわくわくさせられる本だ。

新種発見と聞くと、水曜スペシャル川口浩探検隊のおどろおどろしいナレーションと共に音楽が流れてきて、探検隊はジャングルの奥地でついに見つけた!となりそうだが(例えがおじさんだけど)、ここで出てくる発見談はどれもそんな派手さはない。実際に新種の発見はち密な観察や文献調査の末に見つかったりするもので、野外で採った瞬間にということはほとんどない。でも発見談を読むと謎が解けた瞬間や新種と解明できた瞬間の感動が共有できる。

本書は発見談パートがメインではあるが、コラムと用語解説も素晴らしい。用語解説のところでは、命名規約上の適格名と不適格名、有効名と無効名なんて言葉まで解説されている。うちの学生でも間違ったり知らなかったりしそうだし、私なら一般読者に理解してもらうのが面倒だから省略してしまおうと考えそうなところだが、しっかり解説している。こういう科学的に紳士な態度で解説しているのだから、読者はしっかり難解でも用語解説まで目を通さねばならないだろう。

絵や写真を眺めていても楽しめる。ぜひこういう夢のある本は、生き物好きだけでなくいろんな人に読んでもらいたいものだ。小学校の読書感想文の推薦図書にして各小学校に置いてもらいたい。