まるはなのみのみ

日記です。ときどき意見や感想。

ベトナムからハゴロモヤドリガ

Hiroyuki YOSHITOMI, Ryosuke OKANO and Hong Thai PHAM (2015) New Record of Fulgoraecia bowringii (Lepidoptera: Epipyropidae) from North Vietnam. Japanese Journal of Systematic Entomology, 21 (2): 263–264.
春にベトナムに行った際に採集したハゴロモハゴロモヤドリガが付いていて、それを初記録として報告した。たいした内容ではないが、自身チョウ目で最初の論文(Gむしとか地方同好会誌とかには短報故書いたことあるけど)。ケーススタディとして書いておく。
ハゴロモを採集したら腹部に大きなハゴロモヤドリガの幼虫が付いているのを野外で見つけ、面白いなと思ったので、岡野君にお願いして一緒に各木のハゴロモの寄生率とDBHを計測した。ハゴロモが多く集まっている木で寄生が多かったが、まぁ差がでるようなデータではなかった。標本を持ち帰り、まずネットで論文を検索してみた。するとPierce (1995)やBowring & Westwood (1876)、Newman (1851)がヒットし、ホストであるハゴロモの種類(Pyrops candelaria)から香港とインドから知られるFulgoraecia bowringiiというハゴロモヤドリガであることが判った。この文献探索は数時間もかからなかった。しかしこの仲間の研究としてKato(加藤正世) (1940)という日本の論文が出ていて、これがどうも大切なもののようだ。そこで研究室の書庫を探すが見つからない。諦めかけて他の大学に文献複写依頼を出そうかと思いかけたときに、ふと石原蔵書の著者別別刷りファイルを見るとその中に見つけることが出来た。確かにこの報告には欠かせない重要な論文であった。他にもこの加藤の別刷りコレクションには重要な情報が眠っていた。
何が言いたいかというと、ある程度の情報はネットを駆使すれば得られ、専門家でなくとも調べることができる。これは論文を情報として集めるだけのこと。しかし当然、ネットにはアップされていない情報もありこれを得るには結局は網羅的に収集された文献コレクションなり図書館なりを利用することになる。特に日本の古い時代の文献類には重要なものがあったりするが、まずもってネットでアップされていない。最終的には持っているか持っていないかで、論文を書けるかどうかが決まってくる。
網羅的な文献収集、個人別であったり事象別であったり、PDFであったり冊子や別刷りであったり、それを研究室として行い蓄積することが重要で、それを受け継いでいく必要があるのではなかろうか。もっと大きく考えると、それを学会とか国とかのレベルで行うことも必要なのかも知れない。
 
余談だが、この幼虫の脱皮は腹面はクシュクシュと丸め、背面はまるでカツラのようにパコッと外れることが観察された。とても面白いのでセミヤドリガの研究や本でも調べてみたが、このような報告がされているかどうかははっきりしなかった。