まるはなのみのみ

日記です。ときどき意見や感想。

Beetle hind wing

Fedorenko, D. N., 2009. Evolution of the beetle hind wing, with special reference to folding (Insecta, Coleoptera). 336 pp., Pensoft Publishers, Sofia.

甲虫類の後翅脈については、近年になりKukalova-Peck & Lawrence (1993, 2004)やBeutel & Haas (2000)により盛んに研究されており、それらの研究を基に甲虫類内の亜目の関係についても論じられたりしている。本書はそれらを拾い集め、かつ著者のオリジナルを含めた内容となっている。Folding patternについては不勉強で内容の良し悪しが判断出来ないが、丁寧に論じられている様子。いっぽう、venationについては、これまでの研究を踏襲しつつも新たなネーミングも行っているようなので今後の他研究者による検証・検討が注目される。後翅脈相からはScirtoidea(特にScirtidae+Declinidae)が特記される存在であることを強く書いてあるところが印象に残った。
本の後ろには240属のHind wing venationの図が掲載されており、これまでの先行研究で図示されていたものも見ることにより、何か調べる際には便利だと思う。
Fig. 57として後翅を用いての”系統樹”が示されているが、これはKukalova-Peck & Lawrence (1993, 2004)をそのまま図化しただけで、オリジナルのものとは考えられない。そして残念ながらここ数年に発表されたいくつかの論文により、この系統関係はかなり信頼度を落としており、本樹はあまり意味が無い。おそらくは、本著の執筆後にこれら最近の研究が発表になったのだと思う。
Kukalova-Peck & Lawrence (1993, 2004)、Beutel & Haas (2000)などを持っていれば、甲虫の後翅脈相について調べる際には事欠かないと思われるが、お金の余裕があれば本書もぜひ入手しておくべきだろう。
PENSOFTのHPから注文できる。送料込みで85ユーロ。著者にメールしようと思ったら著者の住所等が書かれていなかった。残念。