一昨年春に大阪自然史で講演をさせて頂いた。講演を始めるときに聴衆を見渡すと後ろの席の方に見たことがある顔があった。中川さんだった。もう20年以上前に確か野中さんと一緒に採集に行ったことがあって、それから標本を貰ったりもしていたのだが、すっかり不義理していた。実は顔を見て、ああこの人は、と思ったのだが名前を失念していた。おまけに20年前それも単なる学生だった自分のことを覚えているだろうか、と声を掛けるのを躊躇してしまった。講演後、20年前の追憶を遡りやっと名前を思い出し、声をお掛けしようと思った時には既に姿は無かった。中川さんは私が講演することを知ってわざわざ来て下さったのではないか、そう思うと残念に思った。
年末に中川さんが亡くなったことを知った。あの時声をかけておけば、と後悔するばかり。ご冥福をお祈りします。
