まるはなのみのみ

日記です。ときどき意見や感想。

ミゾアカハネムシの溝の謎

Eisner, T. et al. (1996) Chemical basis of courtship in a beetle (Neopyrochroa flabellata): cantharidin as preopulatory "enticing" agaent. PNAS, 93: 6494-6498.
Eisner, T. e al. (1996) Chemical basis of courtship in a beetle (Neopyrochroa flabellata): cantharidin as "nuptial gift". PNAS, 93: 6499-6503.
橋本君に教えてもらった論文。古いが自分のメモ代わりに書いておく。
アメリカのアカハネムシの一種Neopyrochroa flabellataの雄は頭部に深い溝を有している。その溝にはカンタリジンの分泌腺があり、そこから分泌するカンタリジンを交尾前に雌にプレゼントし交尾を成功させる。雌は貰ったカンタリジンを産卵の際に使用し卵を捕食者(テントウムシの幼虫)から防御するのに役立っていると言う。説得力ある写真や図が示されており、論文を読まずとも妙に納得させられる効率的な素晴らしい論文だと思う。
アカハネムシやアリモドキ、ヌカカ科などの昆虫の一部にはカンタリジンに集まる種が存在し、よく調べられている。その理由は定かではないが、その謎の一端が解明されるような話である。また、今回の種とは属レベルで異なるが、日本のミゾアカハネムシなどPseudopyrochroa属の数種は雄の頭部に同様の溝を有していることから機能的に同様だと考えられ、同様の生態なのかが気になる。他のアカハネムシ(例えばTosadendrides)やアリモドキでは分泌腺が体表の違うところにありそうなので、それらの交尾前行動がどうなのかも気になる。それ以前に、日本ではカンタリジンにどのような昆虫類が誘引されるのかを調べた研究が無いと思うので、アメリカの先行研究を真似て調べてみるのも面白いかも知れない。