まるはなのみのみ

日記です。ときどき意見や感想。

【書評】 動物分類学

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「動物分類学」 松浦啓一 東京大学出版会 2009年
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動物分類学復権を目指して動こうという上の人たち(先輩という意味)の動きとその情熱は素晴らしく、下の(後輩の)我々も頑張らねばと思わされる。本書もそういった情熱であふれている良い本だ。
自身の体験等をまぜつつ、動物分類学の様々な問題点や面白いところを書いている。
特に印象的なのは最終章である6章の「新種発表を急げ」というところではないだろうか。ここが著者の一番書きたかったことではないだろうか。そうなると、本書は素人向けではなく、動物分類学を志す人向けに書かれたものかも知れない。新種の発表速度を上げる必要性があるというのは、日本の魚類学会の抱える問題でもあるのだが、実は昆虫でも蚊帳の外ではない。ITなどの現在の様々な技術的進化は、一昔前の暗中模索を続けた後にしか分類学的成果を挙げることが出来ない(時には成果が出ないこともある)時代とは違い、研究環境は格段に恵まれている。情報化社会にあって、情報を生み出し整理する分類学は、必要不可欠でもある。
誰でも気軽に、は無理であるが、誰でも志し成果を挙げることが出来る分野ではあるのだから、もっと分類学を志す若手が(そして成果が)出てくることが望まれる。
余談だが、本書は先々週くらいに届いていたが、そのまま山の一部となっていた。いま書いているレポートの参考にと開いてパラパラ読んだのだが、自分の知識の整理にもなりレポートを書くのにたいへん参考になった。初心者(素人)向けには馬渡先生の一連の本のほうがとっつきやすいと思うが、本書の巻末でもきちんと紹介されていて心憎い気遣いだ。