まるはなのみのみ

日記です。ときどき意見や感想。

イタリアに国立自然史博物館を

Andreone F, Boero F, Bologna MA, Carpaneto GM, Castiglia R, Gippoliti S, Massa B, Minelli A (2022) Reconnecting research and natural history museums in Italy and the need of a national collection biorepository. ZooKeys 1104: 55–68. https://doi.org/10.3897/zookeys.1104.79823

Benvenuti M, Barbagli F, Maggiore F (2022) Comment and integration to Andreone et al. 2022 “Reconnecting research and natural history museums in Italy and the need of a national collection biorepository”. ZooKeys 1137: 177–179. https://doi.org/10.3897/zookeys.1137.96414

Andreone F, Boero F, Bologna MA, Carpaneto GM, Castiglia R, Gippoliti S, Massa B, Minelli A (2022) Italian natural history museums need specimen digitization and much more: a reply to Benvenuti et al. ZooKeys 1137: 181–185. https://doi.org/10.3897/zookeys.1137.97631

1本目は、イタリアの自然史博物館の現状と今後の展望について書いている。イタリアには国立の自然史博物館が存在せず、地方公共団体や大学が運営する中規模の博物館が各地にあってそれらが維持管理している状態である。また、近年では大学は実験的な研究を優遇し自然史研究は冷遇されるようになり、学芸員、スペース、物的資源を備えている博物館はごくわずかになってしまった。生物多様性保全やコレクションの維持管理を考えると国立のセンターを設立し各博物館とのコネクションを強める必要があること、加えて国立の標本収蔵施設の整備も望まれることを述べている。

2本目は、1本目の主張に理解を示しつつ各博物館間のコネクション構築にデジタル化こそが重要であろうとしている。政策のところがちょっと判らなかったが、アフターコロナ時代と国の経済状況を考えると彼らの提案に実現性がないと考え、実現性のある提案をしようとしているようだ。

3本目は1本目の著者と同じで2本目に反論している。確かにデジタル化は重要だしその視点は自分たちも持っているが中心となる施設は必要だと考えるし、そもそもコレクションが収容しきれなくなってきているので国立のセンターや収蔵施設は必要だろうとしている。

イタリア国内の2つの学派(?)がお互いの主張を述べているのだが、それをZooKeys誌上で英文で行うのは面白いと思う。日本でも同様の主張がされているが、国内向けに日本語で行われることが多いと思う。この3本の論文はイタリアについて書かれているものだが、日本でも当てはまると思うし日本ではもっと深刻な状況だと思っている。

www.pref.okinawa.jp