まるはなのみのみ

日記です。ときどき意見や感想。

シカとハムシ

松本和馬・加賀玲子(2012)シカの食害で増えた(?)有毒/不味植物食甲虫.昆虫と自然47(4):8-11.
日下部良康(2012)シカの採食に伴う林床植生の単純化がハムシ科甲虫数種の食性に及ぼす影響.さやばねニューシリーズ(5):22-27.
前者では、ルイヨウマダラテントウ、キクビアオハムシ、アカイロマルノミハムシが、それぞれオオバアサガラ、オオバアサガラ、ヤマトリカブト・ミヤマイボタと、シカの食害を受けにくい植物にホスト転換をしつつあるのではという示唆を、野外の断片的な観察を基に行っている。
後者では、アザミオオハムシ、ヒゲナガルリマルノミハムシ、アカイロマルノミハムシが、それぞれトリカブト、テンニンソウ・ミヤマイボタ、トリカブトと、やはりシカの食害を受けにくい植物にホスト転換しつつあるという示唆を、野外観察ならびに簡単な室内実験を基に行っている。
植食性昆虫は(ある程度の寄主選択の柔軟性はあるものの)シカ食害によりホストが消失し絶滅のおそれすらある種が潜在的に多いのでは、と私は思っていたが、意外にも柔軟性があるのかも知れない。今回は両者とも示唆的内容で終わってしまっているが、もう少し計画的に研究を組めば、もの凄く面白いテーマが隠されていると思う。甲虫のみが柔軟性があるのかどうかもとても気になる。また、両者も触れているように、この現象がホストレース形成に繋がる一歩とも読み取れる。
一方で、柔軟性が無い種群、寄主特異性が強く、ホストの消失により潜在的に絶滅のおそれのある植食性昆虫は多いと思う。それらのあぶり出しも必要だと思う。