まるはなのみのみ

日記です。ときどき意見や感想。

Malthodes

NAOKI TAKAHASHI, SHÔICHI IMASAKA (2020) Two new species and a new distribution record of the genus Malthodes Kiesenwetter (Coleoptera: Cantharidae) from Japan, with notes on the male and female abdominal morphology. Zootaxa, 4778(2): 357–371.

モリモトクロチビジョウカイMalthodes morimotoi sp. nov.(本州・九州)とオカヤマクロチビジョウカイMalthodes okushimai sp. nov.(本州・隠岐)を記載した。また、極東から記載されたツヤムネクロチビジョウカイMalthodes parvus Kazantsev, 1995を日本初記録として北海道と本州から記録した。

丁寧で良い仕事。

Podonychus!

Yoshitomi, H. and M. Hayashi, 2020. Unexpected discovery of Podonychus (Coleoptera: Elmidae, Elminae, Macronychini) in Kyushu, Japan. ZooKeys, 933: 107-123. doi: 10.3897/zookeys.933.48771

ヒョウタンヒメドロムシPodonychus gyobu Yoshitomi et Hayashi, 2020が九州から記載された。本属2種目の記録で、タイプ種であるPodonychus sagittarius Jäch & Kodada, 1997はインドネシアのシベルト島から知られるのみで赤道をまたいで隔離分布的な状態になっている。

2018年末、変わったヒメドロムシを採集したとの連絡を受けた。確かに変わっていたが、玄人好みな感じの小さな種だった。触角が6節。さっそくHandbook of Zoologyのヒメドロムシ科のところを見てみると触角の節数が減少するMacronychiniにあっても最小が7節とある。これはすごい発見かも。でも近縁の属すら判らず、ちょっと論文化に躊躇していた。林さんと共同研究することになったが、解剖して詳細に調べても執筆には躊躇していた。何か引っかかるところがある、そういう気持ちだった。2019年の2月頃までは悶々としていた。

ところでPodelmisという属がいる。これは族が違うし触角も全然違うのだが何だか雰囲気が似ている。他人の空似だとは思うが比較してみようと調べたところ、この属に名前が似たPodonychusという属がインドネシアで創設されていることに気付く。文献フォルダから別刷りを探し出して見たところビンゴ!触角も6節、こいつだった。なんとうちのコレクションにはパラタイプがあって、標本の比較もできた。区別するのが難しいくらいとってもよく似ていた。

f:id:yoshitomushi:20200519211121j:plainP. sagittariusのパラタイプ

 

正体が判ってからはサクサク執筆できた。2019年3月にはどうしても我慢できずに自分でも採集に行った。何とか採れたが生息場所がかなりピンポイントで丁寧に教えてもらっていなければ採れなかっただろう。近くの河川でも狙ったが採ることはできなかった。これを最初に採るなんて井上さんすごい。その時に幼虫も採れた。

f:id:yoshitomushi:20200519211214j:plain

f:id:yoshitomushi:20200519211225j:plain

f:id:yoshitomushi:20200519211235j:plain

 この幼虫がとても変わっていて、すごくカッコいい。胸部と腹部の後縁にY字型の突起が並んでいる。こんな幼虫は知られていなかった。

2019年のミュージアムの前期の特別展で、こそっと展示してみた。あまり詳しく解説しなかったこともあり、特に注目されることはなかった。未記載種を展示するのってなんだか難しい。

今回の論文では系統関係には言及できていない。成虫・幼虫の形態からMacronychiniの中でもかなり特殊な気がする。分子系統解析されるのが楽しみ。

さて、なんでインドネシアのシベルト島と九州に隔離的に分布しているのだろう。当初、そういった他の事例を探そうと論文探索をしていて、共同研究者の林さんも同じことを考えていろいろ論文を送ってくれた。そもそもシベルト島も生物地理的に特異なところのようで、そんなところと九州が結びつくというのはあまり考えつかない。集めた論文を読んでもピンとこなかった。実際に自分で採集してみて思ったこととして、本種の生息微環境がちょっと変わっていた。環境自体は小さな河川のツルヨシの根が張り出したところなのだが、そんなところは各所にあって、でも本種が生息するところはその中でもすごく限られていた。文章では表せないような微環境の要求がうるさくて、他の地域では未だ確認されていないだけなのでは?そう考えた。このことは査読者からもいろいろ突っ込まれた。きっと中国やインドシナからは見つかるんじゃないかなと思っている。

それにしても九州はPodonychusも見つかるしSinonychusも見つかるし、ヒメドロムシ的にすごいところだ。Ancyronyxとか見つからないかな。

今回の論文はけっこう思い入れあるものになった。図のプレートがびしっと決まってレイアウトされて、この点もすごく嬉しかった。

プレスリリース

この論文でお世話になった方々どうもありがとうございました。

Pulvinaria3種の再記載

HIROTAKA TANAKA (2020) Redescriptions of three species of Pulvinaria (Hemiptera: Coccomorpha: Coccidae) in Japan. Zootaxa 4779 (1): 131–141. 

あまり詳しく調べられていないPulvinaria属の3種、P. araliae Shinji, 1935, P. enkianthi Takahashi, 1955とP. flava Takahashi, 1955を再記載している。前1種のネオタイプを指定し、後2種のレクトタイプ指定を行っている。

f:id:yoshitomushi:20140514094821j:plain

これはPulvinariaだと思うが、今回の論文の3種とは関係ない写真

ヒメアカホシテントウの学名

A.O. BIEŃKOWSKI (2018) Key for identification of the ladybirds (Coleoptera: Coccinellidae) of European Russia and the Russian Caucasus (native and alien species). Zootaxa 4472 (2): 233–260.

ヒメアカホシテントウChilocorus kuwanae Silvestri, 1909がChilocorus renipustulatus (Scriba, 1791)のシノニムとなった。広域分布で斑紋の大きさなどに差はあるようだけど、雄交尾器などには違いはないとのこと。

f:id:yoshitomushi:20200518122157j:plain

 

日常

自粛の雨の日。いろいろ作業しつつ新たな論文執筆に着手。ちょっと面白い発見なので短報だけど海外誌に出そうと思う。インパクトあるイントロを書かねば。

午後から小降りになったので、河川敷の駐車場に車を停めてその中で娘の楽器の練習。買い物して帰宅。

夜、ググってみたらなんと今日取り掛かっていたグループが数年前に日本から記録されているではないか!ショック。早速その著者に問い合わせメール。海外誌ではなく日本の雑誌に目立たないように出すしかないかな・・・・