まるはなのみのみ

日記です。ときどき意見や感想。

【書評】タマムシハンドブック

福富宏和・山田航・瑤寺裕(2022)タマムシハンドブック.112 pp., 文一総合出版

またまたよい図鑑が出た。若手タマムシ屋3人が協力してタマムシのハンドブックを出したのだ。この3人の組み合わせというのが良い。人気ある分類群だとライバル関係になって仲が悪くなってしまうこともあるが、この3人は何となく仲良さそうだしこのハンドブックを見ても上手く協力して纏まっているところがありそう。この分量で纏めるのは大変だったと思う。普通種はかなり網羅されているのでこの1冊で大抵は用が済んでしまうだろう。書いてある内容がやや専門的なところもあるが、最新の知見も含まれており、とてもお勧めの1冊。

写真も綺麗。タマムシ類の多くがピカピカしているので写真撮影は難しかったと思う。「日本産タマムシ大図鑑(2013 大桃・福富)」という網羅的な大図鑑があり、その中の写真も驚異的に美しかった。今回のハンドブックの写真は全種比較したわけではないが、その種っぽさが出ているように感じた。大図鑑の写真は美しすぎた。例えばチビタマムシの仲間は野外で採れた時のホスト情報もそうだが、(小さいので)何となくの艶が野外で見ると種を判別するコツになったりする。その艶が今回のハンドブックではよく出ている気がする。チビタマ好きとしては、今回のハンドブックのチビタマムシの写真だけ並べて下敷きを作ってくれたら絶対に買うのに。

全種リストは欲しかったところだが、それはネットなどで著者らが示してくれるだろう。「日本産タマムシ大図鑑」が絶版であるため、タマムシ好きのすそ野を広げるうえでこのハンドブックが果たす役割は大きいだろう。

さて、毎度ながらこの図鑑の分布欄を見て思ったこととして「四国とばし」が酷すぎる。四国はどれだけ調査が遅れているのだろうか。恥ずかしいレベル。逆に、この図鑑を参考に四国でタマムシ調査をすれば新発見が次々に見つかるということでもある。今シーズンはこのハンドブックを持っていろんなタマムシを狙ってみようか。まずはヤスマツケシタマムシだな。