まるはなのみのみ

日記です。ときどき意見や感想。

日本のマルドロムシ

Yasuda, K., & Yoshitomi, H. (2022). Revision of the genus Georissus (Coleoptera, Hydrophiloidea, Georissidae) of Japan. European Journal of Taxonomy, 817(1): 111–142. https://doi.org/10.5852/ejt.2022.817.1767

出た。安田君の修士論文。2新種を記載、2新参シノニムを認めており、日本産種を7種としている。ただ、まだもう少し増えそう。既知種全種が雌雄交尾器も含め図示されている。2新種は以下の通り。

タカハシマルドロムシGeorissus (Neogeorissus) takahashii sp. nov.は、石垣島西表島、沖縄島、そして四国(高知県)の標本を基に記載された。エリトラの間室が筋状なのが特徴。高知県では四万十市でトラックトラップで採集されている。私は2度ほど四国で採集されている場所に調査に行ったが採ることができなかった。河川敷の砂地にいると思っているのだけど、正直採れる気がしない。

サトウマルドロムシGeorissus (Neogeorissus) satoi sp. nov.は、石垣島西表島、そして四国(香川県)の標本を基に記載された。後翅が退化しており肩部が引き締まった形をしている。とてもカッコいい。このような形状の種は東南アジアから数種知られておりどれも土壌性。四国から本種が採集されたのは驚いた。でも八重山の標本とは区別できず本論文では同種として扱った。安田君が四国で採集された場所に調査に行ったが、追加は採れなかった。正直採れる気がしない。

四国4県からはそれぞれ1種ずつ記録されている。おまけに高知県香川県からは今回記載したそれぞれ別の新種が採集されている。これだけを見てもいかに調査不足かが判るが、そもそもこのグループは採集するのが難しく、今回はある程度まとまった標本を集め論文化できたことだけでも評価することができると思う。標本調査にご協力いただいた多くの方々ありがとうございました。

タカハシマルドロムシ

サトウマルドロムシ

思い出話も書いておく。これはもともと佐藤先生の残された宿題の一部だった。私が引き継ぎ論文化も途中まで行っていたが何年も眠らせてしまっていた。それを安田君が引き継ぎ論文化してくれたのだった。安田君は研究を行うにあたり、自分自身でマルドロムシを採集していないのは良くないと、記録はないけど県内のいそうな環境に採集に行き、根性で生息地を見つけ出してきたのは驚いた。四国初記録となるシワムネマルドロムシだ。また、今後の分類学的研究を行う上で便利なように頭部と前胸背の凹部に名称を与えているのもポイント高い。最初はZT誌に投稿しようとしていたが、本科を担当するsubject editorが居なかったので近い分類群のsubject editorをしている知り合いに相談したのだが結局誰も引き受けたがらず、仕方ないのでEJT誌に投稿することとなった。で、査読者の1人はその相談したうちの1人だったのは笑い話。