まるはなのみのみ

日記です。ときどき意見や感想。

オニギリマルケシゲンゴロウ

Watanabe, K. and Biström, O. (2022) A New Species of the Genus Hydrovatus Motschulsky (Coleoptera: Dytiscidae) from Japan. Coleopterists Bulletin, 76(1) : 115-121. 

オニギリマルケシゲンゴロウHydrovatus onigiri Watanabe and Biström, new speciesを記載。基準産地は長崎県。本州、四国、九州、対馬に分布。

この仲間(H. confertus species group)は本土域に明らかに2種が分布する。そのうち東京が基準産地のHydrovatus adachii Kamiya, 1932は正基準標本が戦災で焼失しており、マルケシゲンゴロウHydrovatus subtilis Sharp, 1882の新参異名とされている。近年になりサメハダマルケシゲンゴロウ Hydrovatus stridulus Biström, 1997が記録された。で詳細に検討してみると、スラウェシが原記載のHydrovatus subtilis Sharp, 1882は日本産でいま”マルケシゲンゴロウ”とされる実態とは実は違う種であることが判った。ではHydrovatus adachii Kamiya, 1932を当てればよいかというとそう簡単にはいかず、この種はおそらく”サメハダマルケシゲンゴロウ”とされている実態と同じと考えられた。ということで、”マルケシゲンゴロウ”とされる実態が宙に浮く形になってしまうのでこれに対して名前を与えたのが本研究になる。

なかなか高度な分類学的措置を行って、現段階で最もベターな選択だと思う。もう一歩ですっきりしそう。第2著者がフィンランドの研究者ということやH. adachiiのタイプが戦火で焼失していることから、今の戦争のことを考えてしまう。ただ言えることとしては、戦争は生物多様性にはマイナスでしかないということ。