まるはなのみのみ

日記です。ときどき意見や感想。

【書評】新書2作

「「池の水」抜くのは誰のため? 暴走する生き物愛」(小坪遊 2020年 新潮新書

「獣害列島 増えすぎた日本の野生動物たち」(田中淳夫 2020年 イースト新書)

別の書籍を買おうと書店に行った際に見つけて購入。この2冊は外来種と獣害という別の環境問題をテーマにあげつつ、同じ事象のことも触れていたりしてお互い呼応しているのが面白い。2冊ともバランス感覚のある文章でとても良い。買いである。ぜひ生き物好き、自然環境に興味がある人は読んで欲しい1冊。

前者は外来種問題を主軸しつつ日本で起こる生物にまつわる問題を広く取り上げている。ここまで書いて良いの?と思うようなところにも突っ込んでいて、こっちがひやひやするほど。文章も読みやすく、これ1冊読んでおいて、で共通教育の授業ならOKなほどに思う。ただ、個人や団体を傷つけかねない文章もあって、もう少し優しく書いても(そこまで書かなくても)良いのではないかと思う箇所もあった。

後者は獣害を主軸にしているが、ノネコ問題などにも話題を広げている。第三章では「野生動物が増えた本当の理由」として仮説をいくつかあげそれらを否定しつつ、一番大きな理由として、餌の増加を挙げている。これも一因としてはあると思うが、否定している仮説の方も否定はできないと思った。「植生が豊かになっていた1980年代と比べると、現在は劣化し始めたのかもしれない。」というのはその通りな気がする。オオトラツムギのミスを見つけた。

2冊とも野生生物と人間との距離感が重要ということも書かれている。その通りかも知れないが、なかなか難しい。自分自身も”ダークサイド”に落ちてしまうかも知れない。

前者では「もっと知りたい人のための読書リスト」に「侵略!外来いきもの図鑑」が、後者では「主な参考資料一覧」に「ネコ・かわいい殺し屋」が入っていて嬉しかった。これらの本は、今回の新書2冊と共に本当にお勧め。

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