まるはなのみのみ

日記です。ときどき意見や感想。

作業ズボン

フィールドに出るときの格好で、その人がフィールド慣れしているかどうかが判るし、虫採り上手かどうかもある程度判ってしまうものだと思っている。

私が学生になったばかりの頃、フィールドに全く慣れていなかった私は普段と同じジーンズ姿でフィールドに出ていた。そんな時に先輩虫屋のNさんと出会った。Nさんは私の格好を見るなり、そんなんじゃ虫採りできないよ、と言った。

ジーンズだと汚れないように気にしないといけないし雨に濡れると重くて股ずれしてしまったりもする、一番良いのは作業服屋で買う安い作業ズボンだ。」

私は全くその通りだと思い、すぐに作業服屋に行って作業ズボンを買い、それからのフィールドは作業ズボンに長靴というスタイルになった。ちなみに学生の頃は痩せていたので寒い時期は普段履いているジーンズの上から作業ズボンをアウターのような形で2枚履きしていたりした。

作業ズボンの良いところは安くて意外に丈夫なところ。あと、汚れても気にならないところだ。アウトドア用カーゴパンツなどもフィールドに出るのに都合が良いが、お手軽さと安さでは作業ズボンのほうが上だろう。あと、作業ズボンのダサい感じのシルエットも良い。田舎のおじいちゃんなどに警戒されない格好として、汚れた作業ズボンと白い手ぬぐいは必須アイテムだろう。一時は作業用ツナギ服の導入も考えたが、意外に高価で手が出なかった。

さて、Nさんからはもう1つ教わったことがある。そのフィールド用作業ズボンを洗わないことこそ、良い虫を採るゲン担ぎだというのだ。馬鹿正直に私は作業ズボンを洗うことをやめた。たとえ濡れても乾かすだけにした。そうすると、不思議と良い虫が採れるようになった気がしたし、綺麗なズボンを履いていた時より汚れたズボンの時のほうが虫に出会えると思い込んだ。当然、ズボンは臭くなった。洗わないで1年くらい履き続けるとどうなるか?お尻や膝が土で汚れ植物の液がついたりし膝などよく擦れるところから解れたり穴が開いたりしてくる。それでも履いていると、まるでズボンが自然に帰るように生地が土になるような感じでハラハラと崩れ落ちていくのだ。さすがにそうなってきたら、これまでの活躍に感謝して新しいズボンを購入する。フィールドに出まくって共に戦った作業ズボンが土になって自然に帰っていく、この感覚が何とも良いのだ。いつの間にか虫を採るためでなはなく、ズボンを土に帰すためにフィールドに出ているのではと錯覚するくらいであった。

結婚してからは、洗濯しないことが許されなくなってきた。ゲン担ぎの話をしても鼻で笑われた。フィールドから戻って、そのまま部屋で干していたりすると、怒られた。こそっと隠し持っていたりしたものを嫁さんがお風呂場で手洗いしているのを見たりすると、申し訳ないような気持になりつつも、余計なことをしやがって、という気持ちもどこかにあった。でも気が弱い自分は、何も言えなかった。もともと虫採り下手な自分がますます良い虫が採れなくなってきているのは、そういえば結婚してからではないか、と最近思い始めている。

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この前の奄美大島で破れた作業ズボン。2回に1回くらいのペースで洗濯し3年ほど使っていた。このズボンは良い虫との出会いがたくさんあった。応急処置で縫い合わせたがすぐに解れてしまい生地が土に帰るように解けてきたので帰宅後に破棄した。