まるはなのみのみ

日記です。ときどき意見や感想。

同定作業

生き物に詳しい人でも、昆虫の同定作業がとても大変で専門性と経験と、そしてお金がかかることを理解していないことがある。数年前にある学校の生物の先生から、生徒が研究で集めたベントスの同定を無償で、それもかなりの量を依頼されたことがある。協力してあげたい気持ちは少しはあったが、いや同定作業も含めて研究でしょ?昆虫の多様性と作業の大変さを丁寧に説明したが、専門家なのになんでやってくれないのか、の一点張りだった。いや、そもそもベントスはそんなに詳しくないし。図鑑の一部をスキャンして同定に際してどういうことに気を付けたらよいかを説明してあげた。こちらの最大限の協力だった。憤りよりも悲しさを感じた。

最近の図鑑はかなり網羅的なものもあるけど、同定作業をするには市販の図鑑だけでなくたくさんの資料を集め最新の知見にアンテナをはっている必要がある。資料に出てこないコツや見極めのポイントなどもある。専門家に教えてもらったり学会に参加したりして、常に知識をアップデートする必要がある。時間とお金がかかるのだ。

アセスメントなどの環境調査の際も昆虫の同定作業は軽視されている。見積りで人工を計上してもいつも削られた。生物分類技能検定という資格ができた時は、同定作業の地位向上に繋がると歓迎したが、残念ながらそうはならなかった。

同定作業は大変だが、判ってくると楽しいこともある。画期的な資料が出て頭を殴られるような衝撃を受けることもある。判ると世界が広がる感覚と嬉しさは、体験してみないと解らないだろう。