まるはなのみのみ

日記です。ときどき意見や感想。

日本産Osmylus3種の幼虫

SHIGETOMI MATSUNO & HIROYUKI YOSHITOMI (2016) Descriptions of three larvae of Osmylus species from Japan (Neuroptera: Osmylidae), with a proposed naming system for the larval sclerites. Zootaxa, 4189(2): 348–366.
懸案の論文が出た。セカンドながら思い入れの強い論文。
2009年に着任した際、松野君は卒論でヘビトンボの属の系統解析をしていたが、修士に進学するに当たりテーマに悩んでいた。ヒロバカゲロウの分類学的再検討をしたいと思っていたようだが、それは北大の関本さんがやっていることを知っていたので違うテーマが良いと進言した。もしヒロバカゲロウにするなら幼虫が良いのではないかと勧めた。しかし幼虫を採集したことが無いということだったので、幼虫の採り方を一緒に面河渓皿ヶ嶺に行って教えてあげた。結局この2箇所で3種の幼虫をゲットすることができ、それをしっかり成虫にさせて対応関係を明らかにしたのは飼育が上手な松野君のお手柄。論文化するに当たり、体表の棘毛や硬皮板の位置関係をしっかり記載することが次の課題で、これは木元先生のハムシ幼虫の論文を参考にした。本当は、甲虫幼虫の棘毛相の論文に従いたかったが、これを応用するのが意外に難しかったのだ。
そして一番の課題。幻のキソヒロバカゲロウの正体を解明させること。実は硬皮板をしっかり記載する段階で、キソヒロバの記載論文に使用されている図はプライヤーヒロバと全く同じものであることが判明していたのだが、念のためにタイプを京都大学総合博物館に見に行った。しかしキソヒロバと同定された標本はあるもののタイプは無く、記載論文の図を根拠にキソヒロバをプライヤーヒロバの新参シノニムとした。
本当はもう少し早くに論文が出る予定だったが、私が原稿を眠らせてしまったり、ちょっと高めの雑誌に投稿してみたりして遅くなってしまった。