まるはなのみのみ

日記です。ときどき意見や感想。

御嶽山噴火 生還者の証言 あれから2年、伝え繋ぐ共生への試み

御嶽山噴火 生還者の証言 あれから2年、伝え繋ぐ共生への試み」(小川さゆり 2016年 ヤマケイ新書)
昨日購入し、一気に読了。御嶽山は学生の頃から何度も行っている場所だけに感情移入させられ、何度か泣かされた。
第1章は著者の実際の体験に加え多くの噴火に居合わせた人たちの証言を基に時系列で綴られているので生々しい内容となっている。驚いたのは著者の観察力である。周囲の景色や環境だけでなく、登山者や噴火の状況をとてもよく見ている。また決死の脱出も手に汗握る状況である。著者が噴火に居合わせた位置は、最悪な場所の1つだった。ここで著者はいくつかの重要な選択を迫られ、おそらく結果的にそれらすべてに最適解を選択したことによって、著者は下山することができた。山の知識、地の利、体力、装備の備え、そしてすぐに選択し行動に移せる行動力・決断力が、大きな“運”を呼び寄せたのだと思う。
第2章は今回の御嶽噴火の実態を、科学者の報告などを参考に判り易く解説している。
第3章は噴火の後のことが綴られている。著者の自責の念や命を落とした登山者とその遺族のことが書かれている。
第4章の噴火の教訓は、いろいろ考えさせられた。日常、それも秋晴れの素晴らしい景色の中で前触れもない噴火。私がもし遭遇したらと考えると、多くの人がそうしたように、まずカメラで写真を、となってしまうだろう。ここでいかに素早く非日常への切り替えができるか、いかに素早く行動に移せるかが重要なのだと思う。自分の命は自分でしか守れないのだけれども、平和な生活を享受しているせいか、どこか他人任せ的な感じになってしまいがちである。いざという時に日常から非日常へのスイッチの切り替えができなかったり、重要な選択がすぐにできなかったり。国民性だとか、平和ボケだとか、そういったことで済ませられない何か重要なことが、我々に欠落しがちなのだと思う。