まるはなのみのみ

日記です。ときどき意見や感想。

イタヤミドリケアブラムシ

Wieczorek, K., G.-X. Qiao, M. Sano, H. Yoshitomi, M. Kanturski (2016) Descriptions of little-known and unknown morphs of Periphyllus acerihabitans Zhang (Hemiptera: Aphididae: Chaitophorinae). Zootaxa, 4092(4): 583–592.
“イタヤミドリケアブラムシ”は、街路樹でよく使われているトウカエデAcer buergerianumに大発生する害虫で、ネットで検索してもそのような記述が多い。これまでP. viridis (Matsumura, 1919)の学名があてがわれてきていた。しかしこれは間違いで、中国から知られているPeriphyllus acerihabitans Zhang, 1982であることが判明した。真正のP. viridis (Matsumura, 1919)はイタヤカエデに寄生しているとのことだ。
私がアブラムシを始めた頃、街路樹のトウカエデで多数発生している緑色のアブラムシを見つけた。図鑑には出ていない種だったがネットで検索するとすぐに名前が出てきた。しかしこの属の網羅的な研究であるSorin (1990)を引くと何だかしっくりこないし、そもそも外来のトウカエデに在来のアブラムシがこんなに大量発生するのだろうか。疑問に思ったが、そのままにしていた。大学の近くに発生地があったので、数年かけていろいろなモルフを採ることができ、面白そうな生態をしていることも判ってきたのだが、学名の問題が解決しなかった。そんな時に佐野君を通じKarinaを紹介してもらいこの共同研究がスタートした。私の疑問はすぐに解決しおまけにいくつかの未解明モルフを記載するというおまけつきだった。今回の論文に使われたキーになる標本やカラー写真は私のものだが、こうやって日の目を浴びることができてうれしい限り。
問題は、学名と和名の対応をどうするのか?これは近年中に出るだろう昆虫目録ですっきりするだろう。