まるはなのみのみ

日記です。ときどき意見や感想。

【書評】クマムシ研究日誌

だいぶん前に読了していたが、本日のバスのお供で再度読んだので感想を書いておく。
この著者の文章は以前に「パワーエコロジー」で読んだことがあり、文章が上手で面白い人だな、という印象だったが、本書もやはり一気に読まされた。微妙で解りやすい喩えが時折出てきて、これが私にはツボだ。三角コーナーの生ゴミの話なんてそこに必要?笑わせてくれる。
研究の失敗や遅延、将来への不安、現代に蔓延する閉塞感など、様々なものに立ち向かいながらも研究活動を止めない姿勢はただただ脱帽するばかりだ。本シリーズの著者は誰もが苦労しているが、本書の著者が最高難度の問題に直面している気がする。
余剰博士問題に関するコラムは、同意できるところと、出来ないところがあったが、自身に明確な意見や解決策がある訳ではないので反論出来ない。個々人の問題であるというのは、その通りだと思う。私が博士号を授与された時にその時の研究科長が、これからだから、と言われていた。どんな環境や境遇にあっても研究活動を続けてアウトプットを出していくことこそ博士なのだと思う。今は一旦与えられた博士号を取り上げたりできる世の中だから、博士ってなんだろうと、思わざるをえないけど。
何年も論文を出さない研究活動を止めたPIは辞めて後進に道を譲るべきだ、というのはまあその通りでもあるが、今はポストをそのまま削減されて終わってしまう可能性が高く、あまり効果的ではないだろう。