まるはなのみのみ

日記です。ときどき意見や感想。

【書評】 フィールドの生物学17 クモを利用する策士、クモヒメバチ

フィールドの生物学17 「クモを利用する策士、クモヒメバチ 身近で起こる本当のエイリアンとプレデターの闘い」 高須賀圭三 東海大学出版部
生物間のインタラクションは、面白い研究テーマだ。そしてそれがエイリアンVSプレデターであるのだから、映画バリに面白い事象であるに違いない。前者が本書の主人公クモヒメバチ、後者が主人公の寄主のクモである。
エイリアン(クモヒメバチ)は、生きたプレデター(クモ)の外部に幼虫が付着する形で寄生する外部の飼い殺し寄生という珍しい寄生様式をとる。その適応のためにはいくつかの越えねばならない壁がある。どうやってプレデターに寄生するのか、寄生が重複してしまったらどうするか、どうやって寄生しているのか、そしてどうやって寄主を操作しているのか。それらを順々に明らかにしようとしている。研究中のものもあるのできちんとした結果が出ていないものもあるが、そういう方法をとるのか、と驚かされるところも多い。
ハチやヒメバチ、そしてクモに関する解説には少し堅苦しいところもあるが、それらの解説は本書の学術的価値を高めている。そしてフィールドワークや室内の観察が始まるわけだが、失敗したりうまくいかなかったりと大変な思いをしながら、それでも一歩一歩研究を進める。研究がうまくいっても、論文の掲載でも意中の雑誌にリジェクトされたりと一筋縄ではいかない。それでも研究をやめようとしない。
本書は、昆虫の研究に興味がある人にはお勧めの本である。ぜひ手に取ってじっくり読んでもらいたい。30歳そこそこの若手研究者がこのような本を纏めたのはすごいと思う。