まるはなのみのみ

日記です。ときどき意見や感想。

Coquille voyageの出版年考察

Massimo Cretella (2010) The complete collation and dating of the section Zoologie of the Coquille voyage. Bolletino Malacologico, 46: 83-103.
Duperrey’s “Voyage autour du monde, Exécuté par Ordre du Roi, sur La Corvette de Sa Majesté, la Coquille, pendant les années 1822, 1823, 1824 et 1825”の出版年の考察。パートのよって1826年〜1838年に渡っているということで、書籍に書かれている出版年と異なることもあるとのこと。
実はイソジョウカイモドキ属Laiusもこの中でGuerin-Menevilleが記載しているのだが、記載年は1830年とされてきた。しかしその本の発行は実は1838年だったようだ。そうなると問題でMegadeuterus Westwood, 1833という完全に忘れ去られた名前があり、こちらの方が古参となってしまい、Laiusが使えなくなってしまう。ええ、そんな・・・・実は旧北区のカタログを見ておかしいなぁと気付いてはいたのだが、今回、海外の研究者からの指摘・問い合わせが来るまで見てみないフリをしていた。しかしよくよく調べると、Guerin自身が関与している図版の方が1830年に出ており、そちらの方にLaiusの名前と図が出てきているので、これを根拠にLaius Guerin-Meneville, 1830をこれまでのように使用することができそうだ。
引用はかなり面倒なことになりそうだが、Laius属が新参異名とならなかっただけでも幸運。きっと他の分類群では混乱が生じるだろう。
Guérin-Méneville F.E. 1830 [1838]. Crustacés, Arachnides et Insectes. In: Duperrey M.L.I. (ed.) Voyage autour du monde: exécuté par ordre du roi, sur la corvette de Sa Majesté, la Coquille, pendant les années 1822, 1823, 1824, et 1825. Tome II. Part. 2 (1): 1–319. Arthus Bertrand, Paris. http://dx.doi.org/10.5962/bhl.title.57936

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ICZN(規約)は先取権の原理を大原則としている。厳密に規程すると学名の安定性に不都合が生じる場合はICZN(委員会)に提訴することにより、回避する方法もある。しかし現在、ICZN(委員会)が機能していないことと、Biodiversity Heritage Liburary等により古い稀少本等にも容易にアクセスすることができるようになったこと、それに何でも明らかにして問題点を解決せねばならないという風潮があること、これらのことにより学名が不安定になっているようにも思える。そう思うと動物分類学の先行きが不透明で暗い気持ちになってくる。ダークサイド(phylocode?)に落ちてしまうジュダイもいるかも知れない。