まるはなのみのみ

日記です。ときどき意見や感想。

【書評】 裏山の奇人: 野にたゆたう博物学 (フィールドの生物学)

わかむしMLに出した。
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「裏山の奇人: 野にたゆたう博物学 (フィールドの生物学) 」 小松貴 著
生物多様性とは地域地域の固有で特徴的な生物相のことであり、多様性の保全とは地域地域の固有で特徴的な生物相を大切にすること、人間に例えるなら個性の尊重ということになるだろうか。その根源には生きものへの尊厳や敬愛の気持ちが流れている。この本は、そういったことを再認識させてくれた。
小松さんはアリとアリの巣の蟻客を中心に様々な昆虫を対象に研究を続けている。それらの生態はこれまでほとんど解明されておらず、その未知なるものへの探求は、博学な知識に裏打ちされて着実に進んでいく。いやきっと一筋縄でいかない事ばかりだったのだろうと思うけど、努力と根性で切り抜けていく。きっと人間には使うことができない力を使ったりもしただろうし、小人や妖精などのカプセル怪獣のようなものを哨戒して手伝ってもらったりもしたかも知れない。小松さんの生き方を真似することは誰にも出来ないし、しようと思う人もいないかも知れない。でもそれこそ個性の尊重であり、こういう研究者が日本に身近にいることがとても嬉しい。
最近、グローバルとローカルを足したグローカルという言葉をよく耳にする。「thinking globally acting locally」と同じような意味かと思う。生物多様性の研究は究極的にローカルなものであるはずで、それこそ裏山から発信されるものである。別に日本人が海外で研究することを否定するわけではないが、日本の生物多様性は日本人が責任をもって解明・研究すべきではないだろうか。そう小松さんに諭された気がした。
日本の生物相は我々が考える以上に多種多様で、何も判っていない。あと何人、小松さんのような奇人(貴人?)が出てくれば全容が解明されるのだろうか。小松さんの今後の活躍に加え、第2の小松が出てくるのが、なんとも楽しみである。