まるはなのみのみ

日記です。ときどき意見や感想。

記載分類の大協力時代か大競争時代か

JJSEの1号の編集も佳境になってきて、2号に積み残し(というか単純に査読が間に合わないだけ)の原稿がいくつも出てきそうだ。今回は編集側もばたばたしていて、十分に査読に対してフォローできなかったところもあり、早く出してあげられなかった原稿・著者に対して申し訳なくも思う。ここにきてある著者から1号に何とか間に合わないかという連絡をもらう。その分類群は人気があるので、新タクサを先に書かれてしまう恐れがあり早く出してしまいたいのだという。
確かにその気持ちは理解できるところはある。自分自身でも、新種だと知っていて論文を用意し始めた矢先に、先に記載されてしまったことは何度もあり、ちょっと悔しい気持にもなった。しかし新種の記載競争ほど無意味なことはないと思うし、生物多様性の解明の一歩・種が記載されたこと自体を喜ぶべきだ、と私は思う。どうしても新タクサを記載したいのであれば、競うのではなく協力すればよいのではないかとも思う。
以前、Oさんと飲んでいたときに、動物分類学でも大競争時代が来ているとOさんが言っており、大協力時代こそ次の動きだと思っていた私は驚かされたことがある。Oさんの話では、アメリカや中国では動物分類学のような基礎学問でも競争が始まっており、日本や一部のヨーロッパ諸国ではそうではなく取り残されているというのだ。確かにそうなのかも知れない。しかし競争ではなく協力こそが、動物分類学のような基礎的学問分野に大切なのだと思いたい。
ながながと書いたが、ここ最近、私は気持がかなり焦っている。実はいま調べていることを、ヨーロッパの研究チームも調べ始めているということをこの前偶然に知ったからだ。私の研究内容はあるグループの日本と台湾の種のレビジョンで幼虫の記載も行う予定なのだが、その過程で生態的な面白い事象を発見しそれを論文内に書く予定だ。いっぽうでヨーロッパのチームもそのグループの幼虫の形態と生態を調べているようだ。もしかしたら私が見つけた”面白い事象”にも気付いているかも知れない。協力か競争か?先に書いたことと矛盾するが、私は今回、もう5割以上書きあげている状態なので、競争を選び、彼らよりも先に成果を出してしまいたいと思っているのだ。焦る焦る・・・・2新種を記載する予定だが、これらについては誰かが先に記載しまっても良いと思っている。