まるはなのみのみ

日記です。ときどき意見や感想。

【書評】自然を名づける―なぜ生物分類では直感と科学が衝突するのか

自然を名づける―なぜ生物分類では直感と科学が衝突するのか
キャロル・キサク・ヨーン (著), 三中信宏・野中香方子(翻訳)  2013年 NTT出版
実は昆虫学会前に読了していたが、感想を書けずにいた。とても面白くて一気に読まされてしまった。帯を見て、内容はピンと来たがやはりそういう話で、分類学の3つの考え方の対立を一般書的に書いている。私も分類に関する授業でevolutionary systematicsとphenetics、cladisticsの考え方が対立してcladisticsの一人勝ちというようなことを話すが、この本の方が俄然面白い。授業で学生に読ませたい位。というか、研究室の学生は必ず読んで欲しい1冊。
私自身はα分類の論文を量産する形でこれまで研究してきたが、cladisticsを基礎の考え方としている。分類学と系統学とを切り離して考えるべきという意見にはある程度は理解も出来るが、妥協点もあると思っている。甘いというのも何となく理解してはいる。
人間は元来、分類を行う生きものでそれなしでは生きていけない。生物分類学の復興と共に、自然との乖離を何とか是正する道は無いのか、という著者の意見には賛同させられるし、勇気づけられた。今年読んだ自然関係の図書の中で一番かも知れない。
昆虫学会中でも、吉澤さんや訳者の三中さんのスライド内に本の表紙が登場した。