まるはなのみのみ

日記です。ときどき意見や感想。

Best Writing

Ratcliffe, B. C. (2013) Best writing and curatorial practices for describing a new species of beetles: a primer. Coleopterists Bulletin, 67(2): 107-113.
どういうことに気を付ければ迷惑をかけない記載論文を執筆できるかというお話。ICZNやZooBankなどの解説ではなく著者の体験を通じた小話を14のトピックで書いている。分類学者数名が飲み屋で飲みながら会話するような内容。というか、いくつかは実際にそういう場面で友人たちと激論をかわしたことがある。今回の論文(?)は著者の意見が強く出ているので、鵜呑みにするのは危険。正直、たいした内容ではない。いったい著者はどういう人たちをターゲットに書いたものなのだろうか?
いくつか思うことがあったので以下に書いておく。
1.“タイプラベルは36lb以上の重さで100%コットン紙、もしくは少なくともacid-freeでなければならない。著者はByron Weston Linen Ledgerを使っている。” ―ここまで具体的に書いているのは見たことが無かった。しかし、ではPCで印刷して良いのか、手書きが望ましいのか、そこには触れていない。
2.“パラタイプのラベルの色は青、緑、黄、紫などを見たことがあるが、黄色にすべきだ。決まりは無いし世界基準も無いものの、少なくとも北アメリカでは黄色が優勢である。” ―私も黄色を使っているが、北アメリカでは黄色が優勢というのは知らなかった。日本の昆虫分類学では北大・九大で色の流派があり、黄色と青色で大筋は分かれているものの、最終的には研究者個人の好みで色が異なっている。黄色にすべきだ、とは言い過ぎだと思う。
3.“個人的にはホロタイプとは別の性のparatype1個体をallotypeに指定すべきだ。” ―これには反論も出てくるだろうし、私も反対である。著者はICZNを十分理解しつつそう述べているので確信犯である。著者のことはよく知らないが、たしかコガネムシ上科の分類学者だったと思うので、性的二型がはっきりした分類群についてalltypeを使いたい理由は、ある程度は理解できる。しかしallotypeを使うメリットとデメリットを両天秤にかけ、現在のICZNではallotypeは規定していないのだと私は思っている。allotypeを指定するメリットはかなり小さいと思うので、不要だろう。paratypeの1つでは駄目な理由(allotypeを使わないデメリット)が見当たらない。