まるはなのみのみ

日記です。ときどき意見や感想。

ゴマダラコクヌスト

Leschen, R. B. and T. Lackner (2013) Gondwanan Gymnochilini (Coleoptera: Trogossitidae): generic concepts, review of New Zealand species and long-range Pacific dispersal. Systematic Entomology (2013), 38, 278–304.
待ちに待っていた論文が公表された。ゴンドワナ起源と思われるGymnochiliniの形態形質による系統解析と、それに基づくニュージーランドとその周辺に分布が限られるグループに関する考察。新結合と新種の記載を含む。実はこの辺に関してはあまり興味が無い(というか、そんなには面白くないと思う)。
私が待っていたのは、日本産2種(ゴマダラコクヌストとオオマダラコクヌスト)に基づきKolibacia属が創設されたこと。後者がタイプ種。この仲間は原稿を用意していて昨年には学会でポスター発表もしている。以下のような経緯があった。
 
学部生の頃、先輩の中野(大鐘)裕道さんが修士論文作成のために沖縄と奄美に数ヶ月滞在していた。その時の採集品の中に明らかに新種だと思われる沖縄産の大型のコクヌストがあった。ずうずうしくも標本を譲り受けた。佐藤正孝先生に自慢しに行くと、実は佐藤先生もご存知かつ標本をお持ちであった。そこで早速共同で論文を用意しようという話になったのだが、台湾の近似種の存在や、属名をどうしたら良いかなどの問題があり、原稿は大学在学中には作りきることは出来なかった。属の問題は、LeperinaとLepidopteryxという2つの名前が当時使われていて、どちらを使うべきなのかはっきりしなかったのだ。
結局この問題を解決できぬまま時間が過ぎた。
CSIROのDr.Lawrenceと知り合う機会があり、甲虫類の系統分類の第一人者なので、この問題についてもご存知だろうということでお聞きしたところ、実は両者は同じものであり、旧北区の種に対し主にLeperinaが、オーストラリアとその周辺の種に対しLepidopteryxが、それぞれ使用されており、前者は後者の新参シノニムとすべきという明確な答えを貰った。良かった良かった。これで論文に取り掛かれると思ったが、残念ながらLepidopteryxの原記載はかなり珍本に掲載されているようで、少なくとも日本では無いと思われ、自身で問題を解決できずにまた月日が過ぎ去った。
2009年、ついにKolibacがそれらの関係性を明らかにして、LeperinaをLepidopteryxの新参シノニムとして処理した。

(つづくかも)