まるはなのみのみ

日記です。ときどき意見や感想。

四国にハセガワセスジダルマガムシは居ない!

この前から考えている研究のアイディアを書いておく。
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セスジダルマガムシ属Ochthebiusは、渓流の石の飛沫帯に生息する種が多い。本属で最も普通のハセガワセスジダルマガムシ(以下ハセガワ)は、北海道から九州までの平地から山地にかけての河川に広く分布しており、個体数も多い。本種にたいへん類似したホンシュウセスジダルマガムシ(以下ホンシュウ)は、体長がやや小さいほかは、ハセガワに酷似しており、北関東から山陰までの本州と四国に分布している。ハセガワとホンシュウが同一河川に生息する場合、同一地点で両種が見られる場合もあるのだが、ハセガワがより下流部(平野部)に、ホンシュウが上流部(山間部)に生息する、いわゆるニッチシフト(niche shift)が起こっている場合が多い。ニッチシフトの形成要因とその形成方法は不明であるが、両者の生態的・形態的類似を見る限りは、生態的な競合が一因にあると考えられる。
四国からはこれまでハセガワが記録されていない。単に調査不足とも考えられるが、河川下流域の、本来ならばハセガワの生息域と考えられる場所にもホンシュウが生息していることから、四国内ではハセガワが分布せず、そのニッチにホンシュウが進出していると考えられる。九州や本州の瀬戸内地方では、ハセガワは最普通種であるにも関わらず、四国にハセガワが分布していないことは興味深い。
両者の分布様式形成に一体何があったのか、両者の国内の分布を文献記録や現地調査により詳細に調査し、標高や河川規模等に着目して分布様式形成の要因を探る。また、四国内に本当にハセガワが分布していないのか、特に瀬戸内海に面している地方を詳細に分布調査を行なう。また、河川に生息する淡水魚の分布様式等も参考にし、類似する分布パターンを示す魚種が居ないか、確認する。
加えて、これら2種に類似するやや大きい別種、ナカネセスジダルマガムシは、前2種に比べ生息地も限られており生息数も少ない。本種の生息条件や生態的競合の有無等についても、調査を行なう。
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